kyoukokukenbunshi’s diary

狂国見聞史 生きづらい世の中に対して感じたことを書きます

朝鮮学校へのインタビュー

神奈川朝鮮学校へのインタビュー書き起こしです。なかなかこういうお話がきちんと聴ける機会がないので、良い体験になったと思います。

神奈川朝鮮中高級学校訪問とインタビュー


インタビュー日時・場所 2019年2月8日 14時 神奈川朝鮮中高級学校

インタビュー 金燦旭校長先生、神奈川朝鮮中高級学校の高校生の生徒さん四人

インタビュアー 河中 葉

今回は、金燦旭校長先生と神奈川朝鮮中高級学校の生徒さん男女四人にお話を伺いました。

金校長先生に実際に校内を見学させていただきながら、朝鮮学校設立の経緯や朝鮮半島の統一について、日本社会の抱える問題などについてインタビューしました。

私自身、朝鮮学校に行くのは初めてでしたが、金校長先生と生徒さんたちの暖かいもてなしのお陰で、心地よい時間を過ごしました。


Q.学校はどんな切っ掛けで設立されましたか? それ以来どういう歴史がありますか?
今は学校にどういう特徴がありますか?


校長先生: この神奈川の朝鮮学校をはじめ、全国に朝鮮学校は沢山あるんですけれども、元々朝鮮半島から色々な経緯で日本の方に渡ってきた人が沢山いるわけです。過去の植民地支配もありましたし、強制連行や徴兵と言った事もありますし、働く場を探したりとか、学ぶために来た人もいます。ですが、ほとんどの場合が自発的というよりは本意ではない形で来た方が多数ですよね、その形態は色々あるんですけれど。

そういう方々が、1945年の8月15日に解放を迎えるわけです。その時に一番最初に考えたのは、今後、自分達の故郷に戻るんだという事です。植民地時代っていうのは、日本人になるっていう教育をされていましたし、自分の子供達が自分の国の言葉や歴史も知らないと困るので、子供達にしっかりした朝鮮民族の言葉、文化、歴史、そういう基礎的な事を教えようと思って出来たのが朝鮮学校の始まりです。

1945年8月15日以降に日本全国に500箇所ぐらいに、国語講習所っていうのができるんです。そういう中で、横浜の地にも朝鮮学校ができるんです。神奈川県で言うと横浜にも出来ますし川崎、溝の口、色んな所にできました。

朝鮮学校ができた当時の思いはまず、朝鮮民族としての言葉をしっかり、子供達が学んで欲しいという事です。言葉を学ぶことが、朝鮮民族の誇りを取り戻すとそう言う気持ちで。一世達が学校というよりも、寺子屋のような感じで始めたのが朝鮮学校のできたきっかけですね。

その後に、本国の方に戻る方も居たんですけれど、東西冷戦の間の中で、朝鮮半島の南側と北側と、違う国家ができました。そういう中で、自分の故郷に帰った方が良いのかどうなのかと迷い、しばらく日本に居ながらも、全体的な情勢を見なきゃいけないんじゃないかと考えた人達(日本に留まった理由は財産の移動制限、コレラの流行、浮島丸事件など様々)が引き続き日本に留まったわけです。そういう人たちが、日本に留まるにしても子供達にしっかりした勉強をさせなくてはいけないという事で、学校の形態を少しずつ形作り、学校運営をしていきました。

しかしながら、1948年と1949年に、当時のGHQから朝鮮学校閉鎖令っていうのが出まして、全国にある朝鮮学校が閉鎖されていってしまうんです。

(資料をパソコンで見る)

―因みに何故、GHQから朝鮮学校閉鎖令が出たのですか?

校長先生: 当時、朝鮮半島の北と南に政権がありましたよね。北側の方は共産社会主義です。南側には米軍が入ってきます。それで、日本にいる在日の人達の中で、朝鮮半島の北側に共感を持つ人達が沢山出てきたんです。故郷は南なんだけれども、色々やっているのを見ると北側の方が、自主的にやっていると考えたのです。どちらかというと南は李承晩政権、アメリカから連れてきた外来政権で、ちょっと違和感があったわけです。全ての人がそうじゃないのですが、色んな見方がある中で、そういう風に思う人が沢山いたんです。そういう人達がどちらかというと熱い気持ちを持って朝鮮学校を運営していたんですね。

アメリカは、冷戦とか、社会主義勢力とかに凄く危機感を持っていたわけです。朝鮮半島の北側を支持する人達が日本にいて、特に何をしたって訳ではないんですけれども、自分達にとって都合の悪い芽は早く潰しておいた方が良いと、そういう意図はあったと思います。

それで、朝鮮学校閉鎖。その後に朝鮮戦争に突入していきます。

(警官隊が学校を占拠している写真の資料を見ながら)

こんな感じですね。こうやって学校に警官隊が入ってきて、全部閉鎖されるんです。

―酷いですね。

校長先生: それで、みんな追い出されてしまいます。中には拳銃で撃たれて、学校の中で犠牲になった青年もいるんです。そういう感じで、この後全国の朝鮮学校がどんどん閉鎖されていってしまいます。500箇所こういう学校があったのが、一つの形態としては、日本の学校の分校として統合されていってしまう訳です。せっかく自分の民族を取り戻す学校として設立したんですけれども…隣の横浜朝鮮初級学校も、近くの青木小学校という日本の小学校の分校になってしまっています。完全に閉鎖される所もあれば、管理下の元に運営される学校もあるような、そういう状況になっていく訳です。壊滅的な打撃を受ける訳ですね。

で、1950年代に入っていく訳ですが、50年代になると朝鮮戦争がありますよね。なので、在日の人達の学校運営や活動、そういうのも凄く混迷するんです。

そういう中で1955年の5月に、朝鮮総連というのができるんですけれども、そこが朝鮮学校の再建に積極的に乗り出しました。

そして、朝鮮学校がそのように運営されていく中で、朝鮮半島の北側、朝鮮民主主義人民共和国側からは、支援がされました。簡単に言えば、日本にいながらも、朝鮮民族の心を大事にして、生きていかなくてはいけないという事で。それが、朝鮮民主主義人民共和国側のひとつの方針なんです。韓国の方は、日韓条約以降、日本にいる在日の同志達は日本に同化していってもしょうがないであろうと考えて政策を取る訳です。

それでそういう、北側の支援、それと在日同胞の力を結集しながら、1950年代の後半から60年代にかけて、各地の朝鮮学校が日本学校の分校とかから、自主運営をするという形になり、みんな今ある朝鮮学校の形態になっていきます。

そういう時に、本国の共和国の方から、教育援助費という事で、一億とか、当時の金額で二億とか、そういうお金も送ってきてもらいまして、学校に通えない貧しい家庭の子達が奨学金を貰って学校に通ったりする事もできるようになりました。後、学校建設費にそういうお金が使われて、全国の朝鮮学校がどんどん新しいしっかりした校舎を作っていって、学校の形態をしっかり整えていきます。70年代に入って生徒数も増えて、一番活気がある時代が70年代80年代の朝鮮学校だと思います。そして現在に至っているという事ですよね。最初の頃はそういう経緯がありました。

そしてうちの学校は、特徴として語学教育に凄く力を注いでいます。日本にいるので、日本語はできますよね。そして朝鮮学校に通って、朝鮮語をしっかりマスターすると。そこに、英語。この三言語を言語的なスキルとして学ぶのではなくて、日本の文化、朝鮮の文化、英語(英語圏の国の)の文化、こういうのもしっかり取り入れながら、語学教育に凄く力を注いでいるんです。日本語、英語、朝鮮語を使った発表会なども、今まで色々と試みてイベントとしてやってきましたし、目標としては、ハングル検定、英語検定漢字検定も、二級くらいを全ての生徒が資格を取得して卒業できればと、そう思っていますね。

―結構ハードですよね。

校長先生: ハードですね。そしてもう一つは、情報教育。IT系の教育にとても力を入れています。日本の学校が情報という授業を正規の科目に入れる前から、中学2年から高校3年まで情報授業を正規のカリキュラムとして取り入れて、もう何十年も前からやっています。こういう情報化社会の中では色んな情報があるので、一つは情報リテラシーメディアリテラシー的な能力をしっかり磨いていくという事を重点的にやっています。それと、ITを活用して、自ら情報発信をしっかりやっていけるような人材育成って言うのを今まで沢山やってきました。最近はそこに、その次の段階に進んでいきたいという事で、プログラミング教育ですとか、そういうことを今後展開していきたいなって所です。色んなビジョンを持ってやってますね。

そして今、学校が掲げている、三つの大きな教育方針としては、一つは、朝鮮民族としてのアイデンティティをしっかり培っていくという事です。二つ目には、コミュニケーション能力としてだけではなくリレーションシップという事で繋げていきたいと。在日の社会はもちろんのこと、日本の社会とも繋げるし、世界の色んなこういうコリアン達がいますね。彼等と繋がっていきながら、このネットワークを繋げていけるような人材を育成したいです。三つ目は、これからの時代っていうのは、物事をスピーディーにやっていくのももちろん大事なんですけれども、新しい価値を創造できるような人材っていうのもとても大事だと思うんです。なので、新しい価値を創造していく人材を育てるというのも含めてこの三つをこの学校の教育方針として、柱にしています。

Q.最近学校でどういった事に挑戦されていますか?先生や学生さん達が具体的にどのような挑戦をされているのか教えてください。


校長先生: 挑戦している事っていうのは、一つはスポーツの分野で、朝鮮学校は伝統的にサッカーがとても盛んなんですよ。部員としては中学生は20名いるかいないかなんですけれども、神奈川県ではベスト8くらいには入っているんです。いい素材の子供達がいますし、在日のプロサッカー選手の、安英学(アンヨンハ)っていう選手が、実は横の小学校の保護者なんです。彼は東京の朝鮮高校を出て、それでその後日本の大学に行って、Jリーガーになって、朝鮮の国家代表として、2010年のワールドカップにも出場しているんです。そこで今、この安英学選手とタイアップして今年の1月から5年かけて神奈川の朝鮮学校に全国大会に出られるサッカーのチームを作っていこうという事で、サッカーチーム作りに挑戦していますね。

―サッカーで世界を目指すような、そういう事をされているんですね。

校長先生: はい、そうですね。

もう一つは、この時代になっても朝鮮学校にも色んな差別的な事が沢山、今になっても残っていますし、やっぱりこれからの子供達は朝鮮半島の統一を見据えながら考えると将来の可能性がとても大きいと思っているんです。そういう中で、人材育成っていうんですかね、正規のカリキュラムの中で学べるものもあるんですけど、この朝鮮学校を卒業した卒業生達は本当に多種多様な分野で活躍している人が沢山いるんです。その人達とタイアップして、子供達の正規の授業とは別に、色んな持っている能力を伸ばしたり新しい刺激を与えられるような課外授業に、新しく取り組んでいるところです。例えばですね、毎年6月の第1週に、青商会(チョンサンフェ)学園っていうんですけれども、チョンサンフェっていうのは我々の30代後半から40代の人達の在日の人達が集まっているような団体なんですけれども…漢字の青いに、商人の商に、会って書くんです。朝鮮語で青商会学園ってあるんですけれども、色んな卒業生の人達が講師で来てワークショップ的な授業を一斉にやってくれるんです。ネイルアーティストの人からCMクリエイターまで色んな人がいて、ラップの人もいます。そういう体験をさせながら、色んな分野に羽ばたいていけるような、そういう感覚を楽しみながらやっていけるような、夢に溢れる課外授業をやっています。

もう一つはイベントとしてやっているんですけれども、ビジネススクールも土曜日に月二回くらいのペースで開講してます。ITのトップ企業で働いている保護者の方なんですけれども、彼等を講師として招いて子供達20人くらい集めて、具体的な事を学ぶビジネススクールを今年から始めています。今年はプリティカルシンキングやプレゼンテーション、そういうのを企業目線から見たものをやっています。もちろん普通の授業でもやるんですね、プレゼンテーション。ですが、また普通の授業とは違いますよね、ビジネススクールでは。どうやって着目しなければいけないのかっていうのを、しっかりレクチャーを受けて発表してみるという事を実践させてます。

―凄いですね。

校長先生: 今度、今年3月で最後の発表会なんですけれども、テーマは朝鮮半島という事で、こういう今の状況の中でビジネスをするなら、どういうプランがあるのかを生徒達に発表してもらってます。貴方は商社の社員ですと。役員の前でプレゼンテーションをしなさいというのが最後の課題に出ていたりして…。来年は弁護士の方もいるんで、ちょっと法律的な分野でのスクールも開校していきたいという事を考えています。

朝鮮学校の現状は正直言って今、教育にお金を掛けなきゃいけないんですけれども、掛けられる状況ではないんです。先生達の毎月の給料も遅配していたんですが、遅配できないんで、2割カットになっているんです。元々少ないんですけれども。そういう中でも、持っているものを持って、今の子供達に未来を見据えてもらい、新しい価値を創造できるような、そういう人材育成をする事を目標にして色んな事に取り組めるようにチャレンジしています。

今年やっている事なんですけれども、1~2年、試験的にいくつかやっている事があるんで、それをまた正規のカリキュラムとタイアップさせながら、朝鮮学校を卒業した卒業生、保護者とタイアップして学校造りをしていきたいと思っています。日本の学校にいたら、保護者が学校の教育に関わるっていう事はほとんどあり得ないと思いますが、我々は逆に学校の先生と保護者と、それから卒業生を含めた在日の力を一つに集結させています。今までは厳しいだけにその力を朝鮮学校の運営に注いでいたんですけれども、子供達の教育を普段の授業以外の場にも積極的に取り入れていきたいっていう事でチャレンジしていますね。それがまた、保護者とか朝鮮学校の周りで卒業した生徒にも、良い意味でモチベーションになって欲しいですし。在日の仲間の誰にとってもより良い関係を築いてやっていきたいと思っているんです。

それがさっき言った繋がりじゃないですけれど、これからは韓国にいる人ですとか、アメリカとか他の国にもいるコリアンが来て授業してくれる事もやっていきたいですし、そういうものが子供達の視野を広げたり世界観を広げたりすると思います。子供達にはジャンルに捉われず色んなものにチャレンジしていくような、そういう気持ちを持って欲しいと思っていますね。


Q.この学校は日本の一般の学校とはどう違いますか?教え方などが日本の学校とどう違うかを教えてください。



校長先生: カリキュラム的には、日本の学校と同じと思って良いと思います。日本にある外国人学校の中で、一番日本の学校のカリキュラムに近づけて学校運営をしているのは、間違いなく朝鮮学校です。

朝鮮学校の教科書っていうのは、文科省の学習指導要領が変わると、それを全部精査し研究して、必要ならば教科書も変えます。それはやっぱり日本に永住していくからです。また他の外国人の方と違って一時的でもないですし、また歴史的に見ても日本に生きてきている年数っていうのが違いますよね。ニューカマーの人達っていうのはわからないですけれども、本当に我々の何世代も前からいるわけです。日本に朝鮮学校がある、その存在意義っていうので一番大切なのは、知識とか能力よりも朝鮮民族としてのアイデンティティです。朝鮮の言葉、文化、歴史、こういう事をしっかり教科としても教えています。学校生活の中でそういう事がしっかり培うように教育しているというのがまず一つの特徴ですね。

例えば学校に来たら朝鮮語しか使ってはいけないなどの決まりがあります。学校の授業は朝鮮語で習いますし、文化とかそういうのはクラブ活動の中でも習いますし、色々な事を生活の中で学んでいきますね。

日本学校と違うところは…そうですね、ここには本当に、物凄く勉強のできる生徒から、本当に勉強の苦手な生徒がいます。我々は特別支援が必要な生徒とかも、一緒に同じ学級に入れて学校運営しているんです。何故かというと皆んな同じ在日なんで。なので、歴史的にいつも友達を大事に思う。そして、お互いの苦手な部分はお互い補っていくという優しさを伝えようと思っています。自分が得意な分野は、苦手な友達に手を差し伸べて手伝っていってあげるという文化なんですね。だから授業で先生が教えますと、グループ学習なんかもすごく自然な形でできます。そして、グループ学習のそれぞれのグループの中が同じようなレベルかというと、そうではないんです。物凄くできる子とできない子とかいますけれど、できる子は優しくできない子に教えてあげたりします。試験前になると、3人くらい机をくっつけて授業を受けるんです。もうそれが試験前の子供達の当たり前の姿なんですね。そして、わからない子はよくわかる子にいつも質問して訊きながら、一緒になって勉強していくというか。そういうお互いを思い遣る気持ちですとか、みんなで力を合わせて何かを成し遂げていくという事をすごく大事に思って学校運営していますね。

そこは日本の学校にもあると思いますが、朝鮮学校が伝統で培ったものは、本当に素晴らしいものがあると、そう思ってます。


Q.朝鮮半島の統一をどのようにお考えでしょうか?統一を成功させる為にはどういう条件があると思われますか?在日の朝鮮人は統一問題に対しては北朝鮮あるいは韓国の人とは違う見方を持っていますか?


校長先生: 私の正直な個人的な見解ですと、朝鮮半島の統一は、私の夢であり人生です。自分の人生の中で、一番成し遂げたい事は何かと訊かれたら、まず朝鮮半島の統一だと、そう思っています。何故なら、人にとって大切な事が色々とあると思うんですけれども、朝鮮民族は20世紀に入ってすぐ植民地支配を受けたからなんです。そして、朝鮮民族の意思とは関係なく、分断という歴史の中で生きてきているんですよね。全て、色々起こっている問題の根本的な問題は、朝鮮半島に住んでいる朝鮮民族が自らの判断で色々な事を決定できない、本当に自主権を持って生きてこれていない事に原因があると思います。韓国にしてもそうですね。北の人にとっても、外国の軍隊がいるとかそういう事ではないですけれども、常にアメリカとの敵対関係の中で、色んな制裁や色んな制約の中で生きていくしかない。何かを決めたくても、そういうものがあるから動けない。そういう状況の中で、朝鮮半島が統一されるっていう事は、朝鮮民族が繁栄していく、最も根本的な問題でありますし、私にとってはとても重要な事です。

なので、朝鮮半島の問題が良い方向に進んでいるっていう問題は、とても良い事だと思っています。

今の朝鮮半島の状況が何故このような事になったかというのは、やっぱり朝鮮民族の力だと思っていますね。北朝鮮の方では力にはやっぱり力で対抗しなくてはいけないという事で、アメリカと交渉する為には、やっぱり核を持たなくてはいけないという状況になったと思います。色んな苦労があったし色んな大変な事があったと思いますし、そういう気持ちは無かったと思いますけれども、色んな今までの状況の中で、そうせざるを得なかった。しかし、核を持つ事によって、アメリカとの交渉の場にしっかり出ていける事となった。

そして南も、本当に良いタイミングと言いますか、李明博とか朴槿恵のような物凄く保守的な政権から、文在寅大統領が生まれ、朝鮮民族の力が一つにならなければならないっていう想いを持った新しい大統領が出てきたっていう事で状況が変わりました。南側の民衆の気持ちと北側の民衆の想いが合致して今の状況が創り出されていると思います。

朝鮮半島の統一を、私はあんまり難しくは思っていないんですね。アメリカとの終戦協定がしっかり結ばれてさえすれば、そしてアメリカが余計な制裁を加えず、北の国力と南の国力があれば、朝鮮半島の人達は本当に平和に暮らせる社会が作れると思います。後、やっぱり何十年分断されても元々は同じ民族なので、人が行き来してどんどん物が往来していけば、やがて力を合わせて、良い社会になっていくと思うんです。なので、イデオロギー的な事とかもあるかもしれないんですけれども、一つの民族として、本当に朝鮮民族の繁栄を第一に考えるという原点だけしっかりしていれば、そんなに複雑で難しい事ではなくて、色んな事が順調に進んでいくと思うんです。

去年の首脳会談を観ても、その一点だけ一致しているので、色んな事がうまくいきますよね。みんな殆どの朝鮮民族の人の心の中に統一したいという気持ちがあるので、そういうところは上手くいくと思います。

じゃあ在日の人達から観たらってことなんですけれども、そうは言うものの、70年も別の体制の中で生きてきたんで、やはり人間の思想的な部分とか根底にあるものの見方、考え方っていう部分では、色々合わない部分があると思うんですね。しかし、我々在日は、北朝鮮社会主義制度というのはどういうものなのか、それでどういう風に北朝鮮が困難な時代を経て今日に至ったのかという歴史に関しましてもわかっていますし、北朝鮮国家の今後の課題がどういうところなのかがしっかり見えていると思います。南の韓国も資本主義の体制にあって、物があって豊かになっているのかもしれないけれども、問題点は何なのかというところが一番見えているのは、我々在日じゃないかなと思っているんです。朝鮮半島が繁栄をしていく中で、我々にしかできない役割が必ずあると、そういう風に思っています。

そしてそういう役割ができた時にそういう人材を朝鮮民族の繁栄のために役立てたいっていう想いもありながら、朝鮮学校の教育を行っているんで、必ず平和な良い時代が近い将来に来るだろうと思っています。子供達には、もう君達は統一の世代なんだよ、だからどんどんそういう方向で活躍できる人材になるようにと、そういう話をしていますね。プラス、やはりここは日本なので、朝鮮半島と日本の関わりっていうのは無視できない問題だと思うんです。そういう中で我々は日本の事もよく知っているんで、日本と朝鮮半島の架け橋にもなれるし、色んな役割やできる事があるんじゃないかと思っていますね。

Q.在日朝鮮人として朝鮮半島の平和統一のために日本国内でどのような活動をされていますか?


校長先生: そうですね、できる事はこの日本の地で沢山やってきているんですよね。それで、朝鮮半島の統一を支援する日本の方々や労組の人、組合の人達と連携を取っています。そして韓国の方の朝鮮半島の統一を支持する人達とはいつも友好的な関係を築きながら、色んな活動をしてお互い協力できるような関係を築いてきています。直接、朝鮮半島に赴いて何か出来ているって訳ではないんですけれども、朝鮮半島の統一を支持してくれる人達を増やしていくような活動を積極的にやってきています。勉強会ですとか、学習会ですとか…朝鮮半島の記念する日、例えば6月15日は、最初の金大中さんの時の首脳会談がありましたけれども、そういう時には必ず祝賀行事をやったりしています。後、北と南と海外の同胞達で作っている、朝鮮半島の統一を望む団体があるんです。今回会合もあるんですけれども、統一を目指す同志達の会合も定期的に開いていて。これも多分そうですよね。(机の上にあるチラシを取り出して見せてくれる)これ、主幹は6.15共同宣言実践日本地域委員会ってあるんですけれども、そういう人達の活動を支援したりとか、色々やっていますね。ここは学校なので、一番大事にしている事は朝鮮の統一が、朝鮮民族にとっての悲願であるという想いを子供達に伝える事です。これは本当に大事な事なんですが、教育をしながら、在日の人達の心の深いところに統一と平和を望む気持ちを培っていけるようにしっかり教育をしています。そしてそういう気持ちが日本の人達にも伝えられるような活動っていうのも一生懸命やっています。


Q.私達は今の日本で反帝国主義に基づいた自由で平等な社会を作れると思われますか?どのようにして正しい情報に全く接していない日本人に真実を伝えて新しい秩序を作ろうと思われますか?

校長先生: 日本の政治や社会の事について、外国人である我々が積極的に干渉する事は、原則としてあんまり良いことではないと思うんです。日本の政治や日本の社会の事は、日本の人達が自主的に考えて行うべき事だと、そう思っています。しかしながら、今の日本の社会の現状に対しては、凄く憂慮していますし、実際に日本の社会が安倍政権以降に凄く右傾化しているようなそういう中で、朝鮮学校にも現実的に色んな弾圧があったりだとか、在日の人達にも色んな圧力が加わって来ています。逆に言えば一番真っ先に圧力を加えられているのが我々、在日の人達ですよね。

なので、我々が持っている正しい情報ですとか、物の見方、考え方、そういう事をしっかり日本の人達に伝えていくという活動は積極的にやっていきたいと思っていますし、そういう中で我々を支援してくださる日本の方々は、やっぱり日本社会の事に対してしっかり観る目を持っている人達だと思います。そういう人達と、どんどん連帯を広げていくという事は今まで以上にやっていかなくてはいけない事ではないのかと思っています。で、やっぱり実際、朝鮮学校を支援してくださっている沢山の方々は、今の日本のこういう社会情勢について憂慮していて、これだけ豊かなのに貧富の格差が物凄くあるし、そういう事に関して凄く疑問を持っている人達が多いんです。人間が人間らしく生きていくという事、ちゃんと平等に生きていくという事について真剣に考えられています。人間の本来の権利をしっかり尊重しながら社会を作るという考えの部分ではしっかり一致するので、そういう人達の輪をどんどん広げていきたいなと思っています。

また、今まではそういう人達と広げていく活動の輪が少し限られた人達とだけの交流だったと思うんですけれども、最近はより多くの日本の人達にそういう輪を広げていければという事で、学校公開を沢山やっていますね。

また、神奈川県内だけですけれども、去年10月に各学校でイベントをやるんです。ここはムジゲフェスティバルっていうのをやりますし、川崎の小学校では川崎大交流祭とか、溝の口の小学校ではサランフェスタとかをやるんです。そこに来た日本の方々は合わせると5000人くらいにもなります。開かれた学校の姿というものが目標にありまして、今まで閉ざしていた訳ではないんですけれども。我々はいつでも開いているつもりだったんですけれども、日本の方に自分達から来てもらえるような環境作りをしていく事によって、朝鮮学校の事も知ってもらいたいです。朝鮮学校の事を知ってもらうという事は、色んな差別を受けているという実態を理解してもらう事にも繋がりますから。それと、今の日本の社会はおかしいんじゃないのっていう考えにも発展していきますよね。そこから実際、朝鮮学校の事だけではなくて身の周りで起きている弱者に対しての扱いですとかの色々な問題が、やっぱり間違いなんだねというような考えにも繋がっていくと思うんで、日本の方々と親密な繋がりを持って、色んな事をやっていきたいと思っていますね。


Q.継続して右翼の攻撃がありますが、彼等はどのような目的を持っていると思われますか?なぜ日本はもっと自由で平等な社会を作れなかったのだと思われますか?

校長先生: 右翼さんですね。今いる右翼は、本物の右翼とは思わないんですけれどね。もうなんか、偽物の右翼だと思いますが、在特会とかね。色々調べていくと、そういうヘイトスピーチをする人達や在特会とかの人達は、自分の置かれている立場や自分が社会に持っている不満の理由を何処かに探したい訳です。そこに、この在日の社会ですとか朝鮮学校とかがありまして、そういうところに不満をぶつける事によって、自分の満たされない気持ちを解消しているというような理由によってヘイトスピーチが起きているっていう事が、わかってきている部分があるんです。それはやっぱりこの社会の仕組みの部分だと思うんですよね。

なので、逆に言えば少し気の毒になってしまいます。ありますよね、ヘイトスピーチの動画。こんな大きな大人が、小さな朝鮮学校の子供に対して、平気で酷い事が言える。普通は言えないじゃないですか。言えるって事自体、あの人達もう可哀想です。少し大きい視点で見れば、可哀想な人達だなって、私は思うんです。勿論、許せませんけれどね。

―そうですよね。

校長先生: それが一つと、日本の社会自体が凄く自然な形でじわじわ右傾化してきたのが、浸透してきましたよね。それが過激ではないんだけれども、色んな事に対して冷静に判断をできないとか、そういった社会になってきていると思うんですよね。日本会議の事とか。別に、何か悪いことは言わないかもしれないんですけれども、例えば韓国のレーダー照射問題などは「あれ、おかしいじゃん」っていう視点しか日本の社会にはない。そういう風に反応してしまうんですよね。何が正しくて何がおかしくてっていう事を普通は冷静に見ようと思うんだけれども、多くの人達がそうは思わないっていう。

―メディアが情報を切り取って、韓国が悪く見えるように報道しているようにも見えますし、インターネットで犯罪について検索すると、すぐに在日の仕業だと検索結果に出ますよね。検索結果のトップの方にそう出てきてしまうんですよね。そういう社会のシステムをもう日本人が受け入れてしまっているのかと、凄く危機感を覚えます。

もう、これは変えられないのかなっていう、そういう気持ちもあるんですけれど…でも何か少しのきっかけで、ガラっと変わるんじゃないかなという思いもありますね。けれども正しい事は必ず正しいんで、必ずどこかで真実っていうんですか、どこが間違えていたかとかそういう事がわかってくると思うんです。やっぱりそういう事を信じながら、色んな人と付き合っていきたいと思いますし…それに基本的に良い人です、日本の人達は。基本的に良い人達だと思います、皆さん。ちゃんと話せばわかるんですけれども、やっぱり自分の主張が弱かったり、流されてしまうような傾向があるので、そこでどんどん正しい事を主張してもらうようなそういう社会にはしたいと思います。

みんな良い人なんです、話すとね。朝鮮学校にもたまに日本の方がいらっしゃるんですが、最初は「大変な学校だよ」と思って来たんだけど見学が終わると「なんか、全然違う」って言って帰る人もいますし、やっぱりわからないというのが良くないので、真実を伝えていけたらと思います。

―テレビを見ていても、変に朝鮮半島の人達の事を揶揄するようなタレントさんがいたり、観ているだけで偏った考えに染まってしまうような印象がありますよね。

校長先生: 僕らから言わせるとテレビのコメンテーターなんて、「貴方達、誰も朝鮮半島に行ってないのに、なんで喋れるの?」って思いますけどね。その時点で話に信憑性がないというか。アメリカに一回も行ったことがない人がアメリカの事を喋ったら誰も信用しないのに、朝鮮半島の事は行ってもいないし研究もしていないのに、色々ネガティブな事も含めて話すんです。逆にちゃんと研究している先生達とかは、あんまりそういう変な事は言わないですよ。冷静な判断を持ってますから。だから無知というものが、今は凄く問題だと思います。

だからこんなに劇的に朝鮮半島の状況が変わってきて、トランプ大統領朝鮮半島と国交を結ぼうって言った時に、日本の人はどうするのかなって思いますね。今まで言って来たことはなかったように振る舞うのか。

―今まで言ってきたことはなかったように振る舞うんじゃないでしょうかね。


Q.これから地球のためにこの地域や日本、東アジアでどのような活動をされていきたいと思われますか?

校長先生: 私はみんなが、平等に生きる事が満足ではないかと思います。これだけ物が豊かだから、みんな平等に暮らせればいいなと、そう思っているんです。

だからみんなが平等に生きていけるように、弱者に対しては支援が必要ですし、そういうのが居心地が良いと思うような教育を進めていかなくてはいけないと思うんです。そういう中でやっぱり、朝鮮半島朝鮮民族っていうのはずっと苦労をしてきたんで、誰よりもそういうものを大切にしていけるはずですし、その気持ちをさらに広げていけると良いですね。特に朝鮮半島の北側はいつも原則的に見えますけれど、みんな平等な権利があるでしょうという事をいつも主張しているんですね。アメリカが核を持つ権利があるなら我々にも有るでしょうってね。

ただそれは今の時代、北朝鮮が置かれている立場が厳しいから、そういう危険なものも出てきましたけれども…でも色んな分野でみんな同じ権利があるのを朝鮮民族がどんどん世界に訴えていってほしいし、そういうものがどんどん浸透していく中で、世界の色んな問題が解決できれば良いんじゃないかなと思います。人がやっている事ですからね、環境問題でも何でもやっぱり人が起こしている事ですよね。人間の心が変わらないと何も変わらないので、心が豊かになっていくような、みんなにゆとりがあるような教育が一番大事かと思いますね。


Q.朝鮮学校の教材と教えかたにはどのような特徴がありますか?朝鮮学校はどのように日本の教育(韓国の教育)の模範になり得ると思われますか?外国にも紹介したい点はありますか?


校長先生: さっきちょっとお話ししたんですけれど、朝鮮学校の教育の一つのスローガンに、「お互いを助け合って、互いに協力して動く(『一緒に連れて行く』という直訳表現)」というのがあるんです。本当に人を大事にして、本当に心の底からお互いを助け合っていくような、そういう気持ちを育てていくような教育に関しましては本当に、朝鮮学校は世界でもトップクラスだと思います。

そして教材は在日の現場の先生や後は大学の先生とか、日本にも朝鮮大学校っていう大学があって私もそこを出たんですけれど、そこの有識者達が集まって、日本の学習指導要領や日本の教育の変化の良い部分というものを常に取り入れながら教材等は作っています。みんな基本的に朝鮮語で学習するので、教科書っていうのは基本は朝鮮語です。問題集も朝鮮語で作られて、朝鮮語をベースにした教育を行っていますね。

朝鮮学校イデオロギー的には北朝鮮社会主義にも関わるし、資本主義の事にも関わります。朝鮮半島が置かれている地政学的な事を考えれば、もう大国に囲まれているわけですよね。そうすると世界の情勢というものが、そのまま朝鮮半島の情勢をもうすごく左右する訳ですね。すると、朝鮮学校で物事を習って、朝鮮半島の事を学ぼうとすると、世界の色んな動きに対して、常にどういう風な視点で観れば良いかっていう観点がしっかり身につきます。インテリジェンスって言うんですかね。ああ、こう言う視点で物事を観なきゃいけないねとか、今ロシアがこう動いているからこういう事があるんじゃないかとかというのが結構、高校生くらいになってくると、わかってくるんです。中学一年生二年生はわからないけれど、高校三年生とか、卒業するくらい前になるとちょっとでも見えてくるんですよ。朝鮮学校の教育の中で、教科の学習だけではなくて、日頃先生達が行っているホームルームとかでの色んなお話でもわかってきます。また差別的な事も、常に差別を受けているので、差別がなんでいけないかとか、そういうものを見に染みてわかっているわけですよね。だから人間性を豊かにするというか物凄く色んな視点も持っていまして、社会的な問題に対してしっかりものを見られる観点を持った人材が育てられるような、面白い教育をやっていると思います。




河中からの質問

Q.朝鮮半島に統一と平和の兆しが見え始めて、学校の生徒さん達に何か変化はあったでしょうか?変化があった場合は、具体的にどういった変化があったのかを教えてください。

校長先生: 去年の4月27日に南北首脳会談があったんですけれど、みんな物凄く喜んで舞っている映像もあります。後で見ていただければと思うんですけれども、何かすごく変化したというよりも、気持ちのゆとりや希望、そういうものが自然に心の中に湧いているんじゃないかと感じています。一年前まで観ても、まず常にこの朝鮮学校って日本の政府から差別を受けたりとかしていますよね。何も悪い事なんかしていないのに、色んな外国人学校があるのに補助金朝鮮学校だけ貰えない。高校無償化も対象から外されました。。なんか、僕達が悪いことしたの?みたいな感じです。少し前までは北朝鮮が核を作っている、作っていると言って、それの本質も全然メディアでは話さない。朝鮮は悪の巣窟みたいだと言って、真実に関しては伝えない。で、韓国の事までも悪く言っていますよね。そういうネガティブな思いが意識しなくても出てきているようなところがあると思うんですけど、それでも子供達は楽しく学校生活を送っているんですよ。やっぱりそういうところが少し取っ払われて、すごく未来志向的に物を考えたり前向きな気持ちになっているんじゃないかなと思いますね。

人の気持ちって簡単に変わらないし、人の気持ちを作っていくってすごく大変な事なのですが、子供達が今回の統一の兆しのニュースを受けてポジティブな気持ちになってくれているんじゃないかな、と思いますね。


Q.一般の日本人に、もっと朝鮮の事を理解してもらいたい事はありますか?具体的にどのような事が、互いに理解を深めていけると思われますか?

校長先生: 本当の歴史を、しっかり勉強して欲しいです。何をやって欲しいとかよりも、誰が悪いとか良いとか、これは日本人がやったから日本人のせい、とか犯人探しをしたりするような事じゃなくて…例えばヒトラーのやった事も、ホロコーストをやった事はドイツ人が悪いかもしれないけれど、世界の人がみんなそんな事は辞めましょうねと言っていますよね。だからやっぱり過去に起きたそういう歴史について、しっかり学んで欲しいと思います。そしてそれを、日本の学校の教育の中でちゃんとやって欲しいです。それが無いから全ての色んな問題が生まれていると思いますね。

―そうですね、なんか、歴史修正主義ではないですけれど。

校長先生: そうですね。

―それに、現代の日本人は「それは私達がやった事じゃないから」みたいに、ちょっと卑屈になっているかなと思うような事がありますし、戦争責任を問うっていうのは今いる私達が考えていかなければいけない事だから、誰がやったとかそういう問題じゃないと思います。同じ過ちを繰り返さないというのが大事じゃないかなと思うのですが。結構、感情的になる人が多いんじゃないかなとお話を聞いていて思いました。

校長先生: だから、慰安婦の問題とかも、どういう経緯で連れてきたとかが問題なのではないですよね。実際に、軍の慰安所でそういう事をさせられたわけですよね。じゃあ、その事実に対してはどう思うのかと。無理やり連れてきたとか、募集したとかそういう問題は本質的な事ではないです。例えば、中国で南京虐殺があったとか。3万人なのか30万人なのかもうどっちでも良いと思うんですよ。3万人だといっても3万人殺している訳ですよね。人が人を殺したっていうこと自体が問題なわけだから、公正な視点を持って歴史教育をきちんとして欲しい。それだけしたら、日本人の持っている国民性からして、しっかりものを見てくれるとそう思うんです。色々ありますけれど、そういう風に思います。無知から色々起こりますね。


Q.ニュースを見る時など、どこのメディアを見て情報を得るのかを教えて頂けますか?日本の大手のメディアの報道する内容は、信用できると思われますか?


校長先生: ニュースは、毎日見ますね。報道ステーションとか、日曜日のサンデーモーニングとか。新聞なんかもたまに読みますけど、正直、今、どういう事が話題になっているのかなという感覚ぐらいでしか見ていません。ちゃんとしたニュースに関する情報源は、もう自分がネットで「このニュースはこういうところが信用できるかな」という風に精査しながら見ていたりとかします。お互いに在日の人同士でも情報を持っているので、「こういうニュースがあったよ」とか「ああいうニュースがあったよ」とか、仲間の方から個別に来るような情報の方を信じていますね。個別っていうのは、「こういうニュース良かったよ」というような口コミのようなものでして。大きいところで報道しているニュースに関しては、全く信用していない訳ではないですけれども、「あっ、今、こういう事が起こっているんだな」とまず思います。でも、本質的な問題とかとは違う部分があると思います。本当はニュースは編集がかかってはいけないと思うんですけれど、特にここ5~6年は本質的なものが見えなくなってきているように感じます。そうなる前までは結構ニュースは僕自身も、「しっかり報道しているんだな」とか、多少は思っていたんですけれど、もうここ5~6年は全然信じなくなっちゃいましたね。

―私と一緒ですね。

校長先生: 普通に聴いていて、なんかすごく浅いんですよね。

―どうでもいい話題とかが出てきますよね。

校長先生: なんでこのニュースをこんなに長くするの?と思うのもあるし、「あー、なんか後ろで隠したい事があるのか」とか、スピンコントロールの報道が多いと思います。だからといって何が真実かは深く追求できないですが…そういうところを見ていると、ニュースソースっていうのは自分で持っていないといけないんだなと思いますよね。メディアよりも、誰がこの情報を発信しているかとか、朝鮮問題に関してはこういう風に言う人なんだな、と認識して判断するとか。後は、朝鮮半島の問題に関しては、北朝鮮の出している新聞とかも見ます。朝鮮新報っていう、我々在日が作っている新聞もしっかり読みます。また、韓国の色んなサイトから、韓国のニュース、メディアの情報を参考にしながら、色んな事を考えていますね。

そういう意味では、韓国のメディアにアクセスする事が多くなったのかな。そう思いますね。


Q.この学校は、この街でどんな役割を果たしていると思われますか?この土地で学校を運営するに当たって、地元の人達と交流する際にどんな事をされているのかを教えてください。


校長先生: そうですね、最近子供達がやっているのは、この学校の近隣を綺麗にしようという事で。この辺は秋口になると落ち葉とかもたくさんありますし、高齢者も多いですし。近くに長い階段があるので、そこを清掃したりして、地域の人達に貢献したいというか…手助けになるような事を率先してやったりしています。後は、毎年卒業生が献血しています。学校に卒業式の数日前に献血のバスが来て、高校3年生と先生方と、あと在日の色んな同胞の人達が来て、献血に協力しているんです。ひとつ、卒業する前にこれから日本の社会に出ていくのに、少しでも役に立つ事は何かないのかなと考えまして。沢山の事は出来ないんですが、献血ならできるねって事で始めて10年以上経つんです。表彰もされていますし。最近なかなか血液が集まらないらしくて、ここに来ると横浜駅で一日献血をやる分が集まるんで助かりますと言われますね。

後は、地域の人たちに沢山学校に来てもらって、イベントなどで朝鮮の歌とか踊りとかを披露したり、朝鮮半島の文化に触れてもらったりとか。文化祭なんかは、日本の方が1000人くらい来てくれるんですよ。そういう形で色んな貢献をしています。

また、日本の学校の学生達と、年間を通した色んな勉強会とか学習会とか交流、こういう事も沢山やっています。大学生なんかも学校訪問して、子供達と交流をしたり、異文化に接してもらうとかしています。日本に育っているんで、本当に日本人っぽいところもあるんですけれど、やっぱり違う部分もありますよね。そういう中で色んな文化の背景がある人と一緒に学んでいき、多文化共生社会ってどういう社会なのかって一緒に考えていくとか、そういう事に率先して取り組んでいます。

それと、地域でやる横浜港祭りとかでパレードをするんですが、イベントにも積極的に参加しています。そういうイベントは他にもあって、アースフェスタ神奈川っていう神奈川県でやっている、外国人が2万人くらい集まるお祭りがあるんですけど、それにも参加して色んなブースを出したりとか。そういう事をしていますね。


Q.政治的な意見の相違や、右翼によって吹聴される在日の人達への偏見などを乗り越えて行くためにも、一般市民同士の交流が必要かと思いますが、これからどういう点に注意してそれらを進めていきたいと思われますか?

校長先生: 日本の人達との民間の交流というものは今までもやってきましたけれど、今まで以上に広げていかなくてはいけないと思います。朝鮮学校が今目指すべきものとしては…そうですね、この学校ももう設立してから70年経つんです。歴史があります。でもなんか、隔たりがあるような気がして。日本の地域の人達が支援して地域の人達に貢献するような学校を目指していますが、世の中に貢献するって言ってもできる事は限られるんですよね。それでもここに学校がある事が地域にとって何かしらのプラスになって貢献していけるような、そういう取り組みを率先してやっていかなくてはいけないのではないかと思っています。でも、朝鮮学校に対する理解が深まらなければ、それはなかなか難しいじゃないですか。朝鮮学校の事を知っている人もいるけれど、知らない人も多いという事で、まず朝鮮学校に来てもらう、知ってもらう、そういう活動を最初の段階としては積極的にやっていきたいと思います。学校に来て、子供達の姿を見て、それで少し話をして接して貰えれば、基本的には朝鮮学校に対して、悪いイメージよりも良いイメージを持って帰ってくださると思うんです。

なので、こちらがいつでもいいですよと言って訪問を待つのではなくて、日本の人達が来やすくなり、自ら来たくなるようなイベントとかの開催を沢山して、そういう事を地道にやっていけば変わっていく部分も沢山あるのかなと思うんです。

多分知らないことによって「朝鮮学校っておかしいんじゃないの」っていうイメージを持っている人がいて、同時にそれが本当なのかなって思っている人も沢山いると思うんです。でも来て貰えれば実際のところはどうなのかという事がわかるので、そういう時に「ああ、自分の考えていた事がちょっとおかしかったんだな」って思って貰えると思うんです。そうするとそれがまた社会を見る色んな目にも変わっていってくれると思うんで、そういう活動を率先してやっていきたいと思います。学校なので、政治活動してもおかしいですし。