kyoukokukenbunshi’s diary

狂国見聞史 生きづらい世の中に対して感じたことを書きます

他者の痛み

ウクライナ戦争の悲惨な状況を知ると、暗澹たる気持ちになるが、日本のリベラル層の中にはウクライナを憎む人がある一定数いるらしい。

 

ウクライナに行ってマイダン革命の様子を観てきた私としては、日本人を観るだけでニコニコしながら親切にしてくれたウクライナの人々を思い出して心が痛むのだが、何かあると結局差別する方向にしか気持ちを向けられない心理というものはどういうものなのだろうと思う。

 

大概、ウクライナはネオナチ政権でアメリカの手先だからロシアは致し方なく攻め入ったのだ、ウクライナが悪いと言う人達は、ウクライナにもロシアにも行った事がなく、想像力だけ働かせてものを言っているきらいがある。

 

もちろん、ウクライナやロシアに何度も脚を運んで双方の良い点も問題がある点も知った上で話す人もいるが、私が知るウクライナは2013年12月まではパリやマドリードブリュッセルよりも治安が良く、人が親切な場所だったし、親露派政権と言われたヤヌコビッチ政権は親露でもあり新米でもあり、どっちつかずの印象は受けていた。要するに、ウクライナウクライナとして自由にものを決める事ができず、自由がないから民衆は怒って政府と戦っていたというのが真実だったと思う。

 

内政干渉を受け続ける小国の立場というものは辛く、彼らは外国人の手を借りないと生きて来られなかった。ドンバスやクリミアで2014年に親露派住民に対してウクライナ政府からの弾圧があった事も事実だが、私はクリミアに住む親露派住民にキエフで知り合ったが、ウクライナ派住民に対して彼らは差別的な態度を取っていたのが気になったし、実際に親露派になる理由というのが民族浄化だったり生活のためだったりするので、日本人が複雑なウクライナ国内の人々の心理を簡単に語れないのではないかと思う面もあった。

 

元々、ウクライナとロシアは交流が深く、仲良くしてきた人達も大勢いるだろう。

 

今回、ジャーナリストの志葉 玲氏が親露派住民が多いハルキフで無差別殺戮があった事に触れ、ロシア軍が親露派住民への弾圧を理由にウクライナへの侵攻をしたと言いながら、結局ロシア語を話す住民を殺戮しているのはおかしいのではないだろうかと書いている。

 

FBで情報収集をしていくうちに、日本人が書いている二次情報や想像で書いた情報を観ていても仕方ない事に気付き、ウクライナ人とも繋がったのだが、彼らは時々、私に助けを求めて情報を送ってくる。

 

ブチャでの虐殺の情報を、ニュースよりも先に知らせてくれたのも彼らだ。

 

(残酷な写真が写っているので閲覧にはご注意下さい)

 

https://telegra.ph/Bucha-Іrpіn-Gostomel-04-03

 

彼らは言う。

「私たちは毎晩空襲を受ける。今まで生きてこられたのが奇跡的だ」

 

私が繋がれたのはウクライナ人のご夫婦なのだが、英語ができる奥さんの方が私の誕生日にお祝いのメッセージを送ってきてくれた。

 

戦場になってしまった故郷に生きて、比較的安全な国にいる私にお祝いのメッセージを送ってくれる気持ちというのは、どれだけ温かいものだろうとメッセージを受け取って感じた。

 

方や、日本では韓国や中国を一方的に憎む右翼よろしく、ウクライナ人を憎む人達がいて、差別と戦争というものは徹底的に醜い。けれども人と人とが国境も国籍も超えて繋がれた時には、マジックのように心に花が咲く。

 

日本で最初にロシア大使館前で反戦デモをしたのは、在日ロシア人の男性だったという。たった一人で警察からの妨害にめげず、戦争に反対した彼の勇気は、多くの人に希望を与えただろう。

 

結局のところ、人は他者の痛みを自分に引きつける能力というものを持ち合わせていなければ、安全な場所に胡座をかいて、命懸けで生活している人達や、取材している人達を偉そうに見下ろすようになる。

 

他者の痛みを自分に引きつけさせてお金を騙し取る詐欺の手口も多々あるが、それとこれとは別個のものではないだろうか。

 

人が生きる事には苦しみがつきまとうが、何故簡単に「情報を処理し、想像するだけ」の言説がまことしやかに語られて力を持ち、苦しめられている人々をさらに虐げるのか。

 

公平な目線が必要であるならば、自由に海外に行けない時代だからこそ、一次情報を手に入れる努力が大事なのではないか。

 

私は日頃、戦争に反対している人々が、簡単に被害者を更に叩く人間に変貌していく様を観て、しばらくの間かなり落ち込んでいた。

 

助けるという言い方は烏滸がましいにしても、暴力に対してそれを止める努力をするのは人として当然の事ではないかと思う。

 

コロナや原発危機などで大手メディアの流すニュースが信用できなくなった層に、今度はインターネット上で撹乱する情報を流したのはジョージ・ソロス氏の作戦だったのではという情報もある。

 

人が対立すればするほど武器を売る側は好都合だが、他者の痛みはストレートに受け止めてはいけないというのが現代のトレンドのようだ。

 

小さな蠢く砂鉄のような私たちに、大きな磁石で戦争の波を起こす者達。

 

悲しい事が沢山起きる世の中で、今必要な事は、自ら人と繋がっていく事ではないのか。

 

苦境に立たされている人々に、少しでも力になれる事がないかと考えるのが、狂った世界に対する薬になるように思う。

 

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