kyoukokukenbunshi’s diary

狂国見聞史 生きづらい世の中に対して感じたことを書きます

私は悪を恐れない 書評

アメリカ大統領選挙に無所属で立候補された、アジア研究所所長のエマニュエル・パストリッチさんの選挙演説集「私は悪を恐れない」の書評を書きました。

 

翻訳、本の出版に大きな力を持って尽力してくださったのは、共通の友人の金ソンジュ先生(慶應大所属)です。

 

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私は悪を恐れない 書評

 


政治家は人の上に立ち、権力を握って市民を統治する。そう信じこまされて今まで生きてきたと思う。

 


アジア研究所の理事長、エマニュエル・パストリッチ氏は、2020年のアメリカ大統領選挙に出馬表明をし、今回、「私は悪を恐れない」という選挙演説を収めた本を出した。

 


私たちは日頃、何気なく車やバスを使って外出し、スーパーでビニール袋に包まれた食品を買い、喉が乾けばペットボトル飲料やプラスチックカップに入ったコーヒーを買って飲む。石油を使って生きて、企業の流す広告を見て次に欲しいものを見つけ、スマートフォンで動画を見て、テレビで退屈を紛らわす事に余念がない。

 


パストリッチ氏が選挙演説で訴える内容は、この不自由ないように見える豊かな生活が地球と人類にもたらす深刻な危機についてである。

 


人間の脳は本能的に次から次へと刺激を求め、蜜の味を味わえないと満足できない仕組みになっているとパストリッチ氏はよく言う。スマートフォンなどが人の脳に与える影響も看過できないものであり、刺激を得てすぐにドーパミンが出る状態に慣れ切ってしまえば、建設的に物事を考えたり、問題を問題と認識して対処する能力が鈍るようになる。だが、人々が次から次へと物を欲する事で利益を得ている大企業は、パストリッチ氏の指摘する事実については断固として否定したいであろう。

 


企業との癒着がなく、金銭の授受もないアメリカ大統領選候補者は彼くらいなものだと思う。テレビに顔が出る事も新聞で話題にされる事もないが、限りなく自由に近い立場で真実を口にするパストリッチ氏の存在は、アメリカ大統領候補として稀有である。

 


パストリッチ氏は演説の中で言う。「どのようにして権力者がインターネットを利用して私たちを本能的で、自制がない動物にするのか、これらの重大な社会危機は今の企業メディアでは一切紹介されていません。我々は努力して、この事実が明らかに見えるようにします。」

 


パストリッチ氏は、特に気候変動の危機や、核戦争が勃発する可能性について言及する。世界的に今年の夏は暑く、北極の氷やシベリアの永久凍土が溶けてきている事について、大メディアは殆ど報じないが、台風やハリケーン、山火事などについてはその都度偶然性があったかのように装う事もある。気候変動が原因と断言するメディアが皆無という訳ではないが、石油で儲ける大企業の機嫌を損ねないように配慮した内容は散見される。

 


SNS上でシェアするニュース記事やそれに対する各々の意見は、極端から極端な形でそれぞれの意見の「信者」を増やし、市民同士の対立だけが色濃くなってきている現状とも言える。

 


その対立の裏で広告を打った大企業や大富豪のみがさらに富を得て、議論を繰り広げる市民達は奴隷として安い賃金で働かされ、さらに購買力のみを煽られて搾取されるという事態に世界は傾いてきている。

 


パストリッチ氏はアメリカの市民に向けてこの文章を書き、訴えているのだが、この「私は悪を恐れない」に載せられた演説の内容は世界の全ての人々にも向けられていて、皆が将来への希望を見出せるものである。

 


生産性とお金、購買力や権力…そして社会に対する従順さを求められて喘ぐ人々には一見すると非力であるように見える。だが、私たちには真実を知り、自ら発信するという力がまだ残されているのである。

 


世界に影響を与えて、他国よりも強い立場から戦争や貿易を進めてきたアメリカという国の大統領選挙の候補者に、パストリッチ氏のような鋭い視点を持って行動する人が現れた事は、それだけ今の世の中が資本主義経済の解毒剤を求めるほど危機に見舞われている事実を知らしめてくれる。

 


私たちが繰り返し刷り込まれ、信じ込まされてきた権力と富の力は、多くの人々を苦しめる格差の拡大と環境破壊にしか貢献してこなかったのである。

 


今一度、是非多くの方に「私は悪を恐れない」を手にして読んでみて欲しい。