kyoukokukenbunshi’s diary

狂国見聞史 生きづらい世の中に対して感じたことを書きます

だんご

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駅まで母と買い物に行った。

最近、田舎の駅でも土産屋が充実してきて、その土産屋に餅菓子や巻き寿司でちょっと有名な店のだんごや大福餅が置かれている。

 

そこのだんごが結構美味しいのだが、ある時間になると100円値引きされる。

 

野菜などを下のスーパーで買ってから土産屋を覗くと、だんごと大福があるので、母が値下げされるまで待ちたいと言う。私はまたスーパーに戻り、母と私の飲み物を買って戻ってきた。母がちょうど、だんごを買っていた。

 

「別に元値がものすごく高い訳じゃないから、値下げ待つのもいやらしいし、元の値段で買ったわ。」と私に言う。

 


二人で飲み物を飲んで椅子に座って一息ついていたが、ちょっと土産屋を覗いてみたくなり、母を椅子に残して店に入った。

 


すると、一人の男性客がやってきて、だんごの棚を覗いていた。だんごがもう無い事がわかると、怒ってレジの女性に詰め寄った。

 


「だんごは?」

 


レジの女性はだんごの棚の前まで行き、一応観てから、「申し訳ございません、おだんごは今日、売り切れてしまいまして…」と申し訳なさそうに言った。

 


男性はまた「だんごは?」と詰め寄る。俺のだんごなのに!と言いたげだ。

 


女性はまた、申し訳なさそうに「申し訳ございません、大福餅ならございますが…」と言うと、男性は3回目の「だんごは?」を言う。

 


私は青ざめた。私達がだんごを買ってしまった事が男性に知れたら、食べ物の恨みは怖いから血を見るかもしれない。母の所に戻り、「ねえ、だんごがなくなって怒ってるおじさんがいるよ」とそっと耳打ちすると、母もびっくりして「どこどこ?」と聞いてくる。私は買っただんごの上に物を置いて隠した。

 


怒って帰っていく男性を見守った後、母は「なんか、おだんご買ったら、レジの女性がすごく喜んでいたのよねえ。あのおじさん、いつも値引きシール貼られるのを待って、このおだんご買い占めて行くんじゃないの?」と私に言う。

 


観ると、レジの女性がもう一人の店員の男性とこちらを観て、大笑いしている。彼女達もだんごおじさんに参っていたのだろうか。

 


観ていると、みんなだんごの棚をチラチラ覗きに来ている。

 


地元の人達は自分の気持ちに正直な人も多いが、こんなにだんごに人気があるとは知らなかった。

 


別の日もだんごの棚をチェックしてみたら、残っている日もある。

 


だんだん地元だけで用事を済ませるようになってくると、今まで都会に客を取られてきた商店はみんな気合いが入るらしい。

 


スーパー化している近所のコンビニにも、珍しい野菜やお菓子が並ぶようになってきている。

 


便利になったと喜んでいるが、よりどりみどりの品物が沢山ないと満足できないのは、人間の困った性かもしれない。

 


だんご一筋のだんごおじさんに関して言えば、三周くらい回って可愛い人ななのかもしれない。

 


しかし、だんごなんて食べられないくらい生活に困っている人も沢山いるのだなと思うと、暗澹たる気持ちになる。

 


駅に行くと連日のように人身事故で電車が止まっていて、帰れない高校生やサラリーマンやOLが溢れている。

 


自助努力のし過ぎで電車に飛び込んでしまう人達は、決して弱い人達ではない。

 


誰も助けてくれないと絶望してしまう気持ちは、社会が受け止めて救えるはずだが、なかなか福祉に繋がらないのが現状だ。

 


そう言えば、私が10代の頃、病気が辛くて夜に家出をして、車の前に飛び出した事がある。警察に保護され、車を運転していた家族に平謝りに謝った。

 


泣きながら病気で学校に行けず、勉強もできなくて、友達もいないから辛くて死にたかったのだと言ったら、その家のお嬢さんがびっくりしたように、私で良ければ友達になってあげるよと私に言ってくれ、警察の人は貴方の命は貴方だけのものではないから自分を大切にしなさいと言って自分の夜食のどら焼きをくれた。

 


今でも思い出すと、人に迷惑をかけて悪かったなと思う。

 


変な話だが、和菓子の餡は人を安心させてくれる味だ。

 


寂しさと悔しさから走ってくる車の前に飛び出して迷惑をかけたのに、友達になってあげるよと言ってくれたお嬢さんの優しさや、自分が食べようとしていたどら焼きをくれた警察官の優しさは、未だによく覚えている。

 


私が和菓子好きなのも、そういう記憶から来ているのだろうか。

 


だんごおじさんはいつも来ている訳ではないのかもしれないが、彼のだんごに纏わる話も知ってみたいものである。