kyoukokukenbunshi’s diary

狂国見聞史 生きづらい世の中に対して感じたことを書きます

米朝首脳会談の決裂2

先に載せたエマニュエル・パストリッチさんの文章の続きです。

反知性主義の台頭とメディアの腐敗

米朝首脳会談の背後に隠された政治的意味は簡単ではなかった。今日起こっている地政学的変化は深刻である。各国政府が妥協して私的な利益に基づいて自らを突き動かすにつれて、政治家はますます超富裕層に取り込まれている。私たちの世界を理解するための指針は日々変わっている。

それでもメディアは、多国籍企業投資銀行を喜ばせるようにこの世界を紹介する役割をしている。メディアは結局のところ、単なるビジネス、企業の広報部の役割を担っている。世界の現状についての知的な探求はなく、ニュースを作るにあたって、道徳的問題は考慮の対象外である。多くの記事は混乱と誤解を煽るだけになっている。会談についてメディアが報じた詳細は、金正恩ハノイまでどのように電車に乗って来たのか、ホテルや外交儀礼の主要な地点において周りの通行がどのように遮断されたのか、ということしかなかった。

メディアは死に、反知性主義の大きな波が米国を席巻し、多くの国はもはや批判的分析が不可能な状況に至った。私たちの世界にどのような危険が潜んでいるのかを考える能力がないのはトランプだけではない。多くの人々がオンラインゲーム、ポルノやソーシャルメディアの中毒になり、どんどん馬鹿になって複雑な問題を理解することができないほど退化してしまっている。
ある意味では、会談の最後に投げねばならなかった重要な質問は、「次の会談はいつ開かれるのか?」ではなく、「多くの団体や機関が現在の真の問題について議論する疎通文化を定着させるにはどうすれば良いのか?」であったのかもしれない。結局、誰かは問わなければならない。ハノイ会談でどんなトピックが取り上げられなかったのか?どのようなことが私たちの時代の本当に重要なトピックであるのか?

世界の富が少数の人々の手に急激に集中している現実は、明らかにトランプとキム・ジョンウンも議論したくない話題であった。朝鮮半島を砂漠化するかもしれない気候変動と規制のない石炭使用の増加による大気汚染も話すことは出来なかったであろう。米国、ロシアの軍需産業を通して多大な利益がもたらされるため、(それが北朝鮮の不安の中心的な原因であったとしても)核戦争と東北アジアにおける軍拡競争の危険性は言及できない。日本、中国、韓国も第一次世界大戦前と同じように、軍備と戦争の脅威は主要な利益源となっている。

首脳会談の焦点は北朝鮮核兵器をどのように放棄するのかに当てられていた。これは、核兵器の先制的使用禁止さえしないまま、戦争の脅威を与えて続けている米国がつくっている何千もの核兵器に比べるとそれほど大きくない問題である。しかし、この問題は別の首脳会談では解決されないであろう。この問題は、市民の真の懸念が反映された対話があり、科学的分析に基づく国際関係における本当の脅威についての言説が中心になる場合にのみ解決される。このような変革は、政策や行政の変化ではなく、文化そのものの変更を必要とするはずである。